なるほど、「詐欺師」 とは言い得て妙だ。







マスカレイド







付き合ってるのか、と言われれば 「多分」 としか答えようがない。

彼女なんでしょ、と問われても 「多分」 としか答えられない。


そんな私に、唯一無二の親友であるは眉根を寄せた。



さぁ、仁王くんに告白したんだよね?」



「…うん」




それはもう、内向的な私にしては珍しく奮闘したのだ。

当たって砕けろ、くらいの覚悟で。




「…で、OK の返事もらったんでしょ?」


「…多分。別によかよ、って言われたから」


「うわぁ、なんか微っ妙な返事…」



眉間の皺をさらに深めながら、ちゃんは顎をしゃくって



「それはともかく、アレは何?」


「…私に訊かれても」





アレ、とは座席に座っている仁王くんと、その肩に両腕を巻き付けて密着している女の子だ。




「教室の中でイチャイチャすんなっつーの、ってツッコむ前にツッコむべきことがあるよねぇ」


仁王がの彼氏なんだったらさ、と溜め息を吐く。



「・・・・・・・・」


私も溜め息を吐きたい気分だ。






仁王くんの席は、私の席の4つ前で。

今、私も座席に着いているから嫌でも目に入る。

仁王くんに抱きついている、女の子が。



嫉妬とか以前に、羨ましいと思う自分が情けない。



告白してから、毎週水曜日だけ、一緒に帰っている。

嫌われたらどうしよう、とか、面白い話なんてできないし、とか思うから、話せない。

仁王くんも口数が多くないから、会話はなく、本当にただ並んで歩いているだけ、という状態になる。



手を繋ぎたいな、と思っても言えるはずもなく。

ただ並んで歩けるだけでも十分、と自分で満足だと思っていたはずだったのだけれど。








ちゃんの表情がますます険しくなる。

私は唇を噛んで、俯くしかできない。





仁王くんの首筋に、女の子がキスをした。






あんなシーンを見せ付けられると、自分が本当は並んで歩くだけでは物足りないのだと実感させられる。












ちゃんが低く、私の名前を呼んだ。





「悪いけど、と仁王、付き合ってるとは言えないと思う」



きまりが悪そうに言う、ちゃんの顔を見ながら。








私も、そう思っていた。


















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続きます。すいませ…!