「不二くん、今日誕生日なんだって?」

 

 

おめでとう、という言葉と共に、ニコニコしながら隣席の女子が言った。

 

 

 

「何でお前、俺の誕生日なんか知ってんだ?」

 

 

俺ですらすっかり忘れていた誕生日を、ルドルフの人間は、観月さん以外知らないはずだ。

 

・・・・・・もっとも、観月さんにも教えた覚えはないんだけど、それはまぁ、あの人はそう言う人だから問題ない。

 

 

 

「お兄さんからおめでとうコールがあったんでしょ?」

 

 

噂になってるよ、と親指と小指だけを立てて、右手を受話器に見立てて頬にあてる。

 

 

 

 

「・・・・・・だ、誰に聞いた!?」

 

「だから噂だってば。不二くんはもう少し、自分が人気あるって自覚した方がいいよ?」

 

 

知らない間に写真とか売買されてても知らないからね、と肩を竦める。

 

写真部のコイツが言うと何だか説得力があって嫌な感じだ。

 

 

 

「・・・・・・た、確かに兄貴から電話はあったけどよ」

 

 

何を隠そう、その電話のお陰で俺は自分が今日誕生日だと思い出したのだ。

 

 

 

何でも見透かしてるみたいにクスクス笑う兄貴との電話は疲れる。

 

 

「・・・・・・はぁ」

 

 

 

思い出すだけで、溜め息が漏れた。

 

 

 

 

「そうなんだ。・・・・・不二くんのお兄さんって、どんな人なの?」

 

 

テニスが強いって話は聞いたことがあるけど。

 

 

 

そう言う隣席の顔を、マジマジと眺める。

 

・・・・・そうか。コイツは全然知らないのか、兄貴のこと。

 

 

 

「・・・・・・何?」

 

 

キョトンとする彼女に苦笑しながら、

 

 

「否、何でもねぇ。・・・・そうだな、確かにテニスは上手いよ」

 

「へぇ?・・・・・・顔は似てるの?」

 

「顔はあんまり似てないって言われる。髪の色は一緒だけど」

 

「あぁ、お兄さんも栗色なんだ?」

 

「あぁ」

 

 

 

兄貴の名前が付いてまわるのが嫌で、青学を抜け出した。

 

・・・・・・だから、兄貴のことを全然知らない人間が居ることは嬉しいはずだ。

 

なのに、実際目の当たりにするとあんまり嬉しくない気がするんだから、拍子抜けしてしまう。

 

 

 

 

「・・・・まぁ、お兄さんのことも気にならなくもないけど、今日は不二くんが主役の日だもんね」

 

 

ニコッと笑うと、指でフレームを作り、俺をその中に収める。

 

 

 

 

「今日、部活でしょ?ケーキの差し入れするからさ、写真撮らせてもらってもいい?」

 

 

 

・・・・・・兄貴も性質が悪いけど、隣席のこの女も相当性質が悪い。

 

 

 

「・・・・・・あぁ」

 

「やった!約束ねっ」

 

 

 

 

好きな女に笑顔で頼まれて、断れる男なんかいないっての。

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday !!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









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これからどうなるんだろうか。





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