「バレンタインデーが誕生日って、なかなか乙女だよね」

 

 

学級日誌に今日の時間割を書き込みながら独り言のように呟く。

 

 

 

「そうかな?」

 

「うん。感覚的に、雛祭りが誕生日の男、みたいな・・・・・・・。アレ?これって両津勘吉??」

 

「両津、って・・・・。こち亀の?」

 

「そうそう。両さんの誕生日って雛祭りなんだって」

 

「へぇ・・・・・・」

 

「まぁ、とにかく妙な感じがするんだよねぇ、個人的に。・・・・・・三時間目って何だったけ」

 

 

今日のことなのに思い出せない。

 

日直の相棒である鳳くんに問うと、少し時間を要してから「理科U」という答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・で。どうやって持って帰るの、ソレ」

 

 

 

時間割を書き終え、感想欄に適当なことを書き付けながら顎をしゃくる。

 

その先には、大きな紙袋5つ分のチョコレートやらプレゼントやらが置かれている。

 

 

 

「今日と明日に分けて持って帰るよ」

 

 

困ったように笑いながら鳳くんが言う。

 

 

 

「そうだよねぇ、さすがに一日じゃ無理だよねぇ」

 

 

その量じゃ、と嘆息する。

 

モテる男は量が違う、量が。

 

・・・・・・・はてさて、どうしたものか。

 

 

 

 

 

暫く考え、感想欄にチョコチョコッと余談を書く。

 

 

 

 

「・・・・・・・・よし、と」

 

 

感想欄いっぱいに文字を書き終え、日誌を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、あとのチェックよろしく」

 

 

そう言いながら日誌を差し出すと、鳳くんは目を丸くした。

 

 

 

「え?」

 

「私、今日部活だから。あとは任せた!」

 

 

一方的に宣言し、押しつけるように日誌を渡す。

 

 

「え、ちょ・・・・・・」

 

「バレンタインデーってテニス部休部なんでしょー?よろしくー」

 

 

ヒラヒラと手を振りながら、教室から走って逃げ出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後直ぐ、鳳くんは日誌を見るはずだ。

 

そうすれば、気付くだろう。

 

感想欄の下部に書かれた、メッセージに。

 

 

 

 

 

 

『今日は鳳くんの誕生日でした。おめでとう!大好きです。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









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おめでとう、そして大好きです。





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