「懐かしいなぁ・・・・・・・・」

 

 

写真を見詰めながらポツリと呟いた言葉に、彼の反応は早かった。

 

 

 

「アルバム?」

 

「そう。懐かしいでしょ?」

 

 

ホラ、とアルバムを岳ちゃんにも見やすいように動かすと、露骨に嫌そうな顔をする。

 

 

 

「女ってどうして写真が好きなんだろうな」

 

「何言ってるの。岳ちゃんだって写真大好きじゃないの」

 

 

自分を思いっ切り棚に上げた発言に呆れてしまう。

 

誰かが写真、それこそカメラ付き携帯であろうが何であろうが、とにかく写真を撮ろうとしていればどこからともなくやって来ては一緒にパシャリと写る癖に何を言っているのだろうか。

 

 

 

「そりゃ、写真撮んのはすきだけどよ」

 

「「撮んのは」じゃなくて「撮られるのは」でしょ」

 

「クソクソ、うっせー!とにかく、俺は過去は振り返らない主義なんだよ!!」

 

「前向きで良いと思うけど、岳ちゃんの場合は多分それじゃ同じ轍を何度も踏むことになよ・・・・・・・?」

 

「だーっ、違うんだっつーの!」

 

 

何が違うというのか。

 

 

キョトンとして岳ちゃんを見ると、頭を掻きむしりながらうんうん唸っていた。

 

 

 

「こうなりゃいっそ言っちまうか・・・・・。否、でもなぁ・・・・・・・・・」

 

 

ブツブツ呟きながら、うんうん悩む。

 

しかし、それも長くは続かない。残念ながら、それでこそ向日岳人だ。

 

岳ちゃんに繊細な思考回路は似合わないという以前に、彼自身がそんなものは持ち合わせていないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「面倒臭ぇ!」

 

 

 

「何が」面倒臭いのかこちらにはサッパリ解らない主語を抜かした熟語のみの文章を叫ぶやいなや、

 

 

 

 

 

 

「昔の写真は俺の方が背が低いから嫌なんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

 

「だから!俺の方がお前よりも背ぇ低いから!!だから昔の写真は見たくねぇんだよっ、クソクソ!!!」

 

 

私の気の抜けた返事にキィ、と唸りながら繰り返すが、それは一回言われた時点でキチンと解っている。

 

確かに昔の写真での私と岳ちゃんの身長差は大きい。

 

今でこそ平均身長の私だが、小さい頃は割と大きな子どもだったのだ。

 

 

ただ、今現在では岳ちゃんの方が背が高いとは言え、身長差は大したことない。

 

何せ大差ない、3p程度の身長差なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、確かに私の方が大きかったけど、ホラ、女の子の方が成長早いって言うし・・・・・・」

 

「苦しいフォローをどうもありがとよ」

 

 

すっかり拗ねてしまったらしい彼に苦笑する。

 

まったく、いつまで経っても子どもっぽいんだから。

 

彼のお母さんとお姉さんもよく言っているが、とても下に弟がいるとは思えない。

 

 

 

クスクス笑いながら、彼の背後に移動し、首に腕を巻き付ける。

 

岳ちゃんを後ろから抱え込むように抱き付き、

 

 

「お誕生日おめでとう。早く成長期に入って身長伸びると良いね」

 

「クソクソ!祝ってんのか嫌味言ってんのかどっちだよ!!」

 

160p以上にならなくったって、私は岳ちゃんが好きだから安心して」

 

「嫌味決定かよッ!」

 

「私はもう身長止まったみたいだから大丈夫だよ、ゆっくりでも」

 

「フォローになってねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

身長なんて、全然問題ない。

 

小さくったって、私はあなたじゃないと駄目なんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――大好きだよ、岳ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy Birthday

 

 

 

 

 

 

 

 










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実は切なさを抱える』の番外編です、その2。





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