「ぜってぇ無理!」


ご丁寧に顔の前で腕を交差させて、いわゆる「バッテンマーク」を作りながら岳ちゃんが言う。




「どうして?どこでもいいって言ったじゃない!」


些かムッとしながら言うと、気不味そうに目を反らす。

まったく、それで話を反らしたつもりなのだろうか?






「岳ちゃん。この前は私、遊園地付き合ったよね?」


あんまり得意じゃない絶叫系に何回も付き合わされ、挙げ句の果てにはバンジージャンプまでやらされたのは記憶に新しい。

ジロリと睨み付けてやるものの、彼の視線は相変わらずあさっての方向を向いたままだ。




「そんなに嫌なの・・・・?」


肩を竦めながら、手にしているチケットに目を落とす。

国立博物館で開催される、ダヴィンチの特別展の前売り券。

近くにある国際子ども図書館にも一緒に行きたいと思っていたのに・・・・・・。


大体からして、もう前売りを2枚買ってしまったのだから、行くしかない。お金がもったいない。




「忍足くんって、建築とか好きだっけ?」


忍足くんを誘ってみようかと、ふと思いつく。

私と忍足くんは、割と嗜好が合うのだ。

もしかしたら忍足くんも、建築物を見るのが好きかもしれない。




「・・・・・・んだよ、俺じゃなくて侑士と行く気かよ?」


「だって、好きじゃない人と一緒に行ったて仕方ないじゃない。忍足くんが好きじゃなくてもいいわよ、建築は跡部くんとか鳳くんが好きだから・・・・・」


鳳くんなら誘えば一緒に行ってくれるだろうし、と言い終わらないうちに、手にしていたチケットが引ったくられる。




「ふざけんな!」


「・・・・・な、何がよ!」


「俺は好きな女が他の男と2人っきりで出かけるのを我慢できる程、余裕がある男じゃねぇんだよ!」


拗ねたような顔をしながら言う。


「・・・・・・・・!」



なんで彼は、こうも恥ずかしいことを言えるのだろうか。



そんなこと言われたら、頑張って説得するか、1人で行くしかないじゃない。






まったく、どうしたってあなたには敵わない。















sk-extra closed.
実は切なさを抱える』の番外編なのです。





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