気分には、色があると思う。
「さすが跡部部長ですね・・・」
思わず、間抜けな声が出た。
仕事帰りに 「少し付き合え」 と連れられたのは、彼がオーナーを務めるホテルの最上階にある、お洒落なバー。
バーなんて、お酒に明るくない私には、無縁の場所なんだけどなぁ。
何だか、お尻の辺りがモジモジする。
そんな中、目の前に出されたのは、キレイなルージュ色のカクテルだった。
ルージュ色、なんて言っても、私が付けるような類の口紅は、ピンクとかオレンジとか、そんなのばかりなんだけれど。
このカクテルのルージュ色は、鮮やかすぎる深紅で。
カップに突き刺すように添えられた苺との赤のコントラストが、とても美しい。
「知ってるか?」
ニヒルに微笑みながら、跡部部長が言う。
「巫女さんの袴が赤いのは、神聖なモノを汚す、って意味があるんだとよ」
「へ・・・・・?」
グラスの傍に何気なく置いていた左手に、骨張った右手が被せられる。
「下に部屋を取ってある。・・・・この後、勿論空けてあるだろ?」
「・・・・・・〜っ!!」
今の気分を色に例えるならば、間違いなく、厭らしいほどの、欲望をかきたてる深紅。
そう、彼みたいな、ね?
“Please
accept this short story type-three as token of appreciation.” closed.
「気分の色」テーマ最終話。(ただし今のところは、と言ってみたり。)
連載「射干玉鳥」の番外編のようなイメージです。
back